離職率低下を目指す人事必見、IT業界の離職率とその理由【最新調査結果】

今回は日本の離職率や就職率(入職率)を見ていきます。特にIT業界を含む情報通信業界に焦点を当て、年齢や性別ごとの違いを解説します。これらの情報は、厚生労働省によって公開された2019年の雇用動向調査に基づいています。また離職率低下のための取り組みを行う企業も紹介していますので、ぜひ離職率を低減をさせたい人事担当者様にご覧いただきたい内容です。

この記事でわかること


令和元年の常用労働者の動き

まず初めに知っておくべき用語として、全労働者に対する新たに就業した労働者の割合のことを「入職率」と言います。

入職率と離職率の推移を平成18年(2006年)からみていきましょう。赤線の「離職率」は13年を通して少しずつ低くなっています。特に近年は数字に大きな変化はなく、比較的緩やかです。一方、青線の「入職率」に一定の傾向は見れず、特にここ5年は数値が上下しています。平成27年から令和元年までの離職率と入職率が近いことから、解雇や退職よりも転職が理由の離職者が多いことが考えられます。

入職率と離職率の推移

「情報通信業界」の入職率と離職率は?

厚生労働省が提示する16の業界の数値と情報通信業界の数値を比較します。

情報通信業界の入職率と離職率

全産業は一般労働者の11.9%が入職し、そのうち11.4%が離職しています。しかし情報通信業に入職する割合は日本の平均よりも高く、12.2%です。また離職率は低く、9.6%です。つまり情報通信業は多くの人が参入する業界で、転職や退職などの離職率低いことが分かります。16業界のなかでも情報通信業の離職率は下から3番目に低くなっています。しかし入職者率も低く下から6番目です。

年齢階級別転職入職率

離職し、他の企業に入職した人の割合を性と年齢階級別に見ていきましょう。次のトピックでも扱いますが、60歳以降は、定年や契約終了を理由に転職入職する人が6割を超えています。そのため、今回注目したいのは、転職入職率の高い20代と30代です。

年齢階級別転職入職率

<男性の場合>

年齢を重ねるごとに数値は低下しています。そのため、若ければ若いほど転職する男性が多く、40代を過ぎるとその傾向は一気に減り、同様な割合を保っています。40代の時点で務めていた企業に定年まで勤務する男性の割合が多いということになります。

<女性の場合>

男性とは異なり、数値が上下する傾向にあります。25歳から29歳の女性が転職する理由に最もあがったのは「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」です。加えて、結婚・育児・出産を理由に離職する割合が最も高い年齢階級は25歳から29歳です。つまり、10代を除き、25歳から29歳の転職入職率が高値である理由は、育児や出産を行うため、労働時間や休日の調整ができる企業を求める女性が多いからだと考えられます。

前職を辞めた理由ランキング

転職入職者が前職を辞めた理由を性別ごとに見ていきます。男性は「その他の理由(出向等を含む)」 と「定年・契約終了」を除くと以下のようになります。

1位「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」11.2%2位「職場の人間関係が好ましくなかった」9.3%3位「給料等収入が少なかった」8.7%4位以降は企業の将来性が不安、能力を生かせなかった、仕事に興味が持てない、結婚など。

女性も同様に2項目を除くと以下になります。

1位「職場 の人間関係が好ましくなかった」14.8%が最も多く、2位「労働時間、休日等の労働条件が悪かっ た」12.5%3位「給料等収入が少なかった」9.7%となっています。

男性に比べて理由の割合に偏りがあったため、どの企業も同様な課題があることを示唆しています。しかし偏っている分、対策すべきことは明確です。解決に向けて取り組む企業が増えることを期待します。

前年と比べると、上昇幅が最も大きいのは、男女ともに「職場の人間関係が好ましくなかった」で、 男性 1.6 ポイント、女性 3.0 ポイントそれぞれ上昇しています。在宅ワークが増え、社員とのコミュニケーションが減っている方は多いのではないでしょうか。コミュニケーション不足は結束力や仕事のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。しかし、むしろ功を奏しているケースもあります。相手との距離感や仕事の状況を感じ取りながら適切な関係性を構築する必要がありそうです。

男女で数値の差が大きくあった理由は?

1位「定年・契約期間の満了」2位「職場の人間関係が好ましくなかった」女性の場合、定年を理由に転職する人は男性に比べ約6%の開きがあるため定年より前に辞めてしまう女性が多いことを示唆しています。また女性は職場での人間関係を理由に辞めてしまう割合が男性より約5%上回っています。職場の男女比や企業文化を見直し、男女共同参画社会を築くことが離職防止に繋がるといえます。

離職率を低下させる施策を行う企業

上記に示した、前職をやめた理由で男女ともに上位に上がったのは「職場の人間関係が好ましくなかった」「労働時間、休日等の労働条件 が悪かった」の2つです。明日から心がけ、改善を図ることができるのは、「職場の人間関係が好ましくなかった」ではないでしょうか。人事を担当する方々にとって新しい優秀人材を見つけることも大切ですが、現社員が長期的に務められるような環境を構築することも大切です。特にここ最近は在宅ワークが増え、社員と対面でコミュニケーションをとる機会が減っています。そんな中、人間関係や在宅勤務の孤独に悩む社員を支えるサントリーホールディングの取り組みを紹介します。

会社公認の「職場の相談相手」

役職定年に達したシニア社員が、定期的に社員に目を配ったり面談を行う仕組みです。仕事のことや人間関係について対面、電話を通して相談することができます。同じ企業で務めてきた社員だからこそ、理解できることやアドバイスできることがあります。相談相手の存在は在宅勤務で孤独を抱える社員の支えとなっているそうです。さらに定年退職後もなお働き続けたいと希望する社員の新たな選択肢ともなっています。https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ270MH0X20C21A1000000/

まとめ

例に挙げた、相談相手になるという取り組みはシニア社員でなくても取り組むことができます。オンラインでのコミュニケーションが増えたことによって、質問や相談することをためらってしまう人は多いのではないでしょうか。日頃の些細な悩みや疑問を雑談のように気軽に話せる環境はより必要になっています。まずメンバーに労働環境や人間関係について話をきくところから初めて見てはいかがでしょうか。

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