知って役立つ日本の「給与明細」の読み方

日本で初めての給料日、思ったより少ない金額が自分の口座に振り込まれていた経験がある外国人も多いかもしれません。会社員の給与や賞与は、額面金額がそのまま支払われることはないからです。

実際にもらった金額は期待より少ないと感じるかもしれませんが、差し引かれた金額には各種保険や税金など、日本で生活していくために必要なコストが含まれています。そこで、自分の給与がどう支払われているか正しく知るために給与明細を読んで理解するための知識が必要になります。

ところが給与明細の内容をろくに見ずにそのまま机の中にしまったり、捨ててしまう人も多いのです。給与に関するさまざまな計算額が示されていますので、給与明細をもらったら必ず目を通す習慣をつけましょう。

今回はその給与明細をどう読み取るか、その基本を解説していきます。

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1.額面金額から引かれる控除項目とは?

日本では、従業員本人が納めるべき保険料や税金などを会社が給与から控除して、従業員に代わって納めています。これは”天引き”と呼ばれています。ただし給与を支給する側に当たる雇用者が、本人の同意なく法律で定められている以外の項目で給与から一方的に支給額を差し引くことは禁じられています。

例えば、所得税の源泉徴収や住民税の特別徴収、公的な社会保険の本人負担分などを会社が給与から控除する場合には本人の同意を必要としません。

「手取り」=「額面」-「控除」

「手取り」「額面」「控除」の3つの用語についてまず簡単に説明します。

会社から支給されるべき時給・日給・月給などの形で計算された基本給に残業代・各種手当などを加えた総支給額が額面と呼ばれます。そして、各種保険や年金などの社会保険料や所得税・住民税といった税金を合わせて天引きする総額は控除と呼ばれます。額面から控除が差し引かれ、手元に入る実収入を手取りといいます。

「聞いていた初任給の金額よりも手取り額が少ない」「昇給したのになぜか思うほど手取り額が増えない」といった疑問も生じます。しかし額面と控除についての知識を得れば、収入がどのように確定しているのか理解を深められ、金額に納得できるかもしれません。詳細は下記の通りです。

「額面」とは会社から支払われる総支給額

額面の内容は企業や雇用契約によって様々な違いがありますが、代表的な項目は以下になります。

基本給時給・日給・月給など、会社から支払われる給与のベースとなる金額のことです。

時間外労働手当雇用契約で定められた勤務時間以外の時間外労働に対する手当です。または1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えた場合にその分に対して支給(時間給から25%以上割増)される手当、いわゆる残業代に当たります。

超過勤務手当法廷労働時間を超える残業の中でも、特に22時~翌5時までの間に行われた残業(時間給から25%以上割増)や休日労働(時間給から35%以上割増)をして働いた場合に支払われる手当です。

資格手当企業が定めた資格を従業員が取得しようとした場合や、実際に取得した場合に支払われる手当です。

役職手当管理職についている場合、役職に応じて支給される手当です。

通勤手当電車・バスなどの交通機関を使用して通勤する場合、全額または一定額の交通費を補助する手当です。車通勤の場合は、ガソリン代が距離から計算されて支給される場合もあります。

上記以外にも、扶養家族がいる社員を対象に支給される家族手当、家賃・住宅ローンなど住宅費を補助する住宅手当、出張に対する出張手当など、各社で用意される独自の手当も多数あります。

「控除」とは給料から天引きされる総額

給料から引かれる社会保険料や税金などの項目が「控除」です。保険料や年金などの社会保険料の半額と、住民税や所得税から算出されます。

社会保険には、医療を受けるための健康保険と年金、雇用保険があります。給与所得者の場合、会社が半分負担するので、本来の掛け金の半分だけを自己負担すればいい形になっています。

税金には国に納める国税と、市区町村や都道府県などの地方自治体に納める地方税の2種類があります。前者の国税が所得税、後者の地方税が住民税です。給与所得者はこの二つを給与から天引きされることで、自ら確定申告を行わなくとも税金の計算と納税が完結する仕組みになっています。他に収入がある場合や、ふるさと納税・医療費控除などで還付を受ける場合は、別途手続きが必要になります。

控除の代表的な項目は以下のようになります。

社会保険健康保険料や厚生年金保険料、厚生年金基金、介護保険料など、日本に在住する上で加入が義務付けられている公的な保険の保険料です。加入者本人と勤務先とが半額ずつ負担します。

雇用保険失業給付や育児休業給付などを受けるため被雇用者の加入が義務付けられている保険で、企業の事業内容により保険料率が異なります。

所得税個人が1年間に得た所得に応じて課される税金のことです。企業に勤めている場合は「源泉徴収」の形で天引きされ、企業が行う年末調整か、あるいは個人で確定申告を行った際に金額が調整されます。

住民税居住地の都道府県や市町村に納める地方税のことです。前年度の年収によって金額が決定されます。

その他に、企業によって用意されている労働組合費や退職積立金、社宅などの家賃といった項目が引かれるケースもあります。

2.給与明細を見てみよう

給料明細

手取り額を実際の給与明細を見て確認しましょう。

企業によって給与明細の形式や各項目名は異なりますが、一般的には「差引支給額」の項目に記載されている金額が「手取り額」となります。

「勤怠」「支給」「控除」の3つの欄

給与明細の項目は大きく、「勤怠」「支給」「控除」の3つの欄に分類されています。

「勤怠」の欄では、出勤・欠勤日数や有給休暇取得日数、残業した時間など、給与計算の根拠となる勤務実績の集計結果が示されています。

「支給」の欄は、基本給に加え、時間外手当(残業手当)、通勤手当、住宅手当など、会社から社員に支払われる金額の詳細が示されます。つまり前述した額面とはそれらの総額のことです。

「遅刻早退控除」「欠勤控除」といった項目がマイナス表記の形で「支給」の欄に入っていることもあります。「控除」と名前が付いていますが、遅刻早退や欠勤で勤務できなかった時間分を差し引く金額が示されています。

「控除」の欄は、給料から天引きされる社会保険料や税金などの金額が記載されます。労働組合費、食事代、親睦会費といった会社独自の控除項目がある場合もあります。

「総支給額」から「総控除額」を差し引いて計算される金額が、いわゆる「手取り」となります。この手取り額が銀行口座に振り込まれるはずですので、確認しましょう。

毎年の年末調整では、払いすぎた所得税が戻ってくる

「控除」の欄で、毎月の給与や賞与から源泉徴収されている所得税の金額は仮に支払っているものであり、その年の終わりに「年末調整」をすることで過不足が調整されます。

本来、所得税は毎年1月1日から12月31日までに得た所得に基づいて決まるため、1年が終わらないと税額が確定しませんが、源泉徴収ではひとまず収入や扶養親族の数などに基づいた仮の税額が天引きされます。

そのため、毎年11月頃から会社で行われるのが年末調整のための書類準備です。例えば扶養親族や生命保険料、地震保険料などに関する書類と、保険会社から送付される「控除証明書」(その年に支払った保険料が記載されているもの)などを従業員は会社に提出します。

会社がこれらの情報を集めるのは、所得税の計算に影響するためです。扶養控除、生命保険料控除、地震保険料控除といった形で「所得控除」が適用され、申請をした情報に基づいて正しい税額との差額を調整します。

まとめ

良い転職先に出会えたとしても、給与が想定していた額より少なくなると、思うような生活設計ができなくなってしまいます。それを避けるためにも、手元に入るお金である「手取り額」を把握しておくことは重要です。

入社前の情報として求人票などに記載されている給与でも、ある程度の手取り額は予想できます。おおよその目安としては、額面の約80%(75~85%)程度を「手取り額」として見積もっていればいいでしょう。ただし、額面が高くなると所得税率も上がりますし、前年度の年収や扶養家族の人数で控除の金額も変わるため、あくまでも目安として考えてください。

また給与計算のルールは複雑ですので、会社も100%ミスがないとは言い切れません。給与明細をもらったらそのままにせず、必ず毎月確認するようにしましょう。

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